善游者溺
先頃の千葉県豪雨の報道を聞いていると、取材者が住民に「デキスイ」と話していた。 辞書を引くと溺水の項はある。但しジャクスイと読む川の名前である。溺で始まる二字熟語には溺死、溺漂、溺惑など二つの動詞の並列するもの、溺愛、溺信、溺色、溺酒など水以外の対象を後置するもの、溺人、溺鬼、溺卒、溺途など続く名詞を動詞が修飾するものがある。 溺れるとは水に沈んで身動き出来なくなる事を指す。仮に後ろに溺れる対象を持ってくるならば溺海、溺池、溺潦等とどこで溺れたかを説明するかも知れないが普通は於を介在する。デキスイも河川や湖沼で溺れるの意味に取るなら百歩譲って許容する余地が無いとも言い切れないが洪水に巻込まれる事は言わない。酔酒、live a life なども使わない。どんな酒に酔うのか、どんな人生を送るのか説明する必要がある。 医療現場でデキスイを用いるらしいが、症状を総て二字熟語に統一する業界の習わしが関係するのだろう。音も被らないので緊急時に判別し易い。併し例外と見做すべきだ。目撃者との面談でデキスイと発してしまうのは問題がある。 _/_/_/_/_/ [同日追記]中国語の辞書にはデキスイが載っている。口語中の単音節 ni4 では紛らわしいので複音節にしているのだろう。却って逆水と間違えそうなものだが。中日辞典には「(水に)溺れる」とあり微かな抵抗が見て取れる。